高気密住宅の落とし穴
昔の日本家屋の場合は、間口が広く、壁が少ないので、戸やふすまををあけれ
ば、新鮮な空気が自由に室内に入ってきます。
材質にも、木、紙、ふすま、土壁、漆喰、畳など、高温多湿の国の気候にふさわ
しい通気性に優れた素材が使われていました。
そのため、きっちりと戸締りをしても、外部と内部の空気の循環がゼロではなか
ったのです。
また、床下に風が通るように、どの家にも縁の下がありました。このように家に
湿気がこもらない構造だったため、100年以上持つ家も、珍しくありませんでし
た。ところが、ここ20年ほどで、日本の住まいは大きく変わりました。
冷暖房エネルギーのコストを抑えるために、通気性のほとんどない、「高気密高
断熱,高遮音性」を謳い文句にした住宅が,主流になってしまったのです。
密閉型の住宅は、欧米の乾燥した気候には合っていても、高温多湿の日本に
はふさわしくありません。
建材に無垢の木が使われていない上、室内にはビニールクロスがはりめぐらさ
れています。家自体が呼吸しないため、ビニールハウスの中で暮らしているよう
なものです。家の空気が外に逃げないと、空気中の水分も家の中にこもり、結
露します。床下も、小さな通気口が開いているだけなので、当然、ジメジメと湿
ってきます。そして、カビが発生すると、カビを好むダニも発生します。
高気密住宅では、エアコンによって冬でも暖かいため、カビやダニにとっても、
繁殖するのに格好な環境です。
こうして家の中にはハウスダストが充満し、それがエアコンのファンで空気中に
舞い上げられて、子供たちの肺や胃の中にどんどん吸い込まれていくのです。
そうなれば、健康な子供でも、やがて喘息やアレルギー症状を発症することに
なるでしょう。
昔の日本には、鼻水をたらしている子はいても、アトピー性疾患に悩む子供は、
珍しいものでした。
最近の子供たちにアレルギー疾患が多発している原因のひとつが、高断熱、高
気密の湿気によるカビ、ダニの繁殖であることは、どうやら確実のようです。