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WHO(世界保健機構)が示す健康住宅の条件を、個人の努力だけですべて満たそうとすることは難しいが、少なくとも、温度・湿度・通風・換気・日照・採光・照明、音などの室内環境を適切に維持管理することによって、健康住宅に近づけることは可能である。

実際、「すまい環境」は、住宅や施設、インフラなどのハード面の整備段階での配慮が重要である。

①温度・湿度

温感は、単に温度だけから感じられるものではなく、湿度・気流・輻射熱などの影響が重なりあっている。また、着衣の量や作業状況、個人差によっても感じ方は異なる。一般的に快適な温度は、冬季は18~20℃、夏季は27~28℃(外気温と5℃以内の差)といわれる。近年は、省エネルギー温度として、冬季18℃、夏季28℃という設定温度が推奨されている。快適湿度は40~60%である。

温熱環境は、建物全体を断熱材で覆うことで向上させることができる。

室内温度を快適に保つためには、戸外に庇や日よけを設けたり、雨戸やカーテン類などを効果的に用いる方法がある。近年は、窓や壁につる性の植物をはわせることによって室温の上昇を押さえるなどの工夫もみられる。

湿度は、こまめな換気や除湿機・加湿器などで調整することができる。

湿度が高いと、結露やカビを生じやすい。カビの発生は、アレルギーや喘息などの原因になるともいわれているので、注意が必要である。

②通風・換気

空気中には、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物などのほかに、ちりやダニ、各種の菌、タバコの粉じんなどさまざまな汚染物質が含まれている。

人の呼吸によって排出される二酸化炭素もまた身近な汚染物質である。

これらの汚染物質は、換気によって取り除くことができる。

必要な換気量は、汚染物質の発生状況や部屋の大きさ、その部屋を利用している人の数などによて異なる。一般には、必要な換気量は、居住者1人あたり1時間に30㎥であり、2~3時間に1回室内の空気が入れ替わるくらいが目安である。なお、調理中や暖房時、入浴後などには、必ず十分な換気を行うよう心がける。

暖房時は、1時間に5分程度の窓開け換気が効果的である。

効率的な換気を行うためには、できるだけ対角線となるように窓を2か所以上開ける。また、換気用の小窓や給排気口は閉め切ったり家具などでふさがないように注意する。

近年は、高気密住宅の普及に伴い、意識的に換気を行わないと十分な換気量が確保できない。このため、シックハウス症候群と呼ばれる健康障害が問題になっている。シックハウス症候群とは、住宅の建材や家具・生活用品などから発生する揮発性化学物質による空気汚染が原因で引き起こされる健康障害で、住宅から離れると症状が改善されるのが特徴である。

2003年(平成15年)に施工された「改正建築基準法」により、特定の化学物質の使用の規制や、24時間換気システムの設置が義務付けられるなどの対策が講じられ、新築物件での被害は減少傾向であるが、住宅のリフォームに伴う問題は減少していない。

いずれにしても、空気汚染への対策は、十分な換気環境を整えることが重要である。また、防虫剤や芳香剤、消臭剤など化学物質を発生しやすい生活用品を極力使用しないようにするなど、汚染物質の発生源を住宅内に持ち込まないように心がける。

③日照・採光・照明

日照は、日当たりや採光にかかわり、季節や天候、時間により変化する。

また、近隣の建物の高さや窓の位置などによっても影響を受ける。

夏季の直射日光は、庇やすだれ、カーテンやブラインド、ルーバーなどを用いて調節する。また、窓先に落葉樹を植えることにより、夏季は直射日光を防ぎ、冬季は日照を得るという、季節に応じた調節も可能である。

日照が不足していると感じる場合は、人工照明によって明るさを補う。

人工照明には直接照明と間接照明がある。直接照明は光が強いが陰影も強く、間接照明では軟らかな光環境をつくることができる。

部屋の明るさの目安は、部屋の広さや光源(白熱灯か蛍光灯か)によって異なる。部屋の広さや生活行為の目的にあった照明方法を選ぶとよい。

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